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浦和地方裁判所 昭和58年(行ウ)10号 判決 1985年3月25日

埼玉県草加市金明町七八一番地の一

原告

森やす

右訴訟代理人弁護士

小山利男

埼玉県川口市青木二丁目二番一七号

被告

川口税務署長

金井優

右指定代理人

江藤正也

江口育夫

南昇

長沢幸男

三ツ木信行

岩本忠

岡田正

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

「1 被告が昭和五六年一一月二一日付でなした原告に対する昭和五五年分の所得税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件加算処分」、といい、本件更正処分と併せて称するときは「本件課税処分」という。)を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

主文同旨の判決

第二当事者の主張

一  原告・請求原因

1  原告は、昭和五五年一月一〇日八幡建装株式会社(以下「八幡建装」という。)との間で、別紙物件目録記載の原告所有の各土地(以下、同目録(一)、(二)、(三)記載の土地をそれぞれ「本件土地(一)」、「本件土地(二)」、「本件土地(三)」、といい、これらを併せて「本件各土地」という。)を農地法五条一項三号に基づく農地転用届出書の受理を条件として代金六二二四万円で売渡す旨の契約を締結し、同年二月二〇日埼玉県知事により右農地転用届を受理されて右会社に本件土地の所有権が移転した(以下、右時点を「譲渡時」という。)ので、翌五六年三月一五日右土地の譲渡所得については租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの。以下「措置法」という。)三一条の三第一項の適用があるものとして、別表の「確定申告」欄記載のとおり確定申告をした。

2  被告は、原告に対し昭和五六年一一月二一日別表「更正及び加算税賦課決定」欄記載のとおりの本件課税処分をなした。

3  本件課税処分の違法性

(一) 被告が、本件各土地の不動産登記簿上の地目が田又は畑であるのに、譲渡時の現況が農地ではないとして措置法三一条の三第一項を適用しないでした本件課税処分は、同法の解釈を誤った違法な処分である。即ち、措置法三一条の三第一項は、特定市街化区域農地を宅地の用その他政令で定める用途に供するために譲渡した場合の所得税の軽減を規定したものであるが、同項にいう「特定市街化区域農地等」につき「農地」の要件は、不動産登記簿上の地目が田又は畑である土地であって、農地法上の規制を受けている土地、即ち、いわゆる宅地並み課税されている土地(本件各土地は、宅地並み課税されている。)であり、その現況は問われないからである。

しかも被告等課税庁は、従来現況が農地と認められない特定市街化区域内の土地についても措置法三一条の三第一項を適用していたところ、突如として従来の方針を土地譲渡者に不利益に変更して本件課税処分をなしたものであるが、法の改正によらず、法の解釈の変更によって原告に不利な課税をする本件課税処分は、租税法律主義に反するとともに憲法の精神に反する違法な処分である。

(二) 本件各土地は、譲渡時の現況も農地であるにもかかわらず、本件課税処分は、これを雑種地と認定してなされたものであって、この点においても違法である。即ち、

原告は、昭和四八年以前から、草加市旭町五丁目に本件各土地を含む約九〇〇坪の農地を所有し、耕作していたところ、同五〇年ころから周辺に住宅が建ち、本件各土地を含む右約九〇〇坪の土地に水が流れ込み、周辺の住民の中に、ガラス片等の危険物を投入する者がでてきたため対応に苦慮していた。その頃、原告は、草加市の職員から、同市が実施している水路工事から排出する泥土によって右土地を埋立ててはどうか、との申出を受けてこれに同意し、本件各土地を含む右約九〇〇坪の土地は泥土によって埋立てられた。原告は、埋立完了後、その上に更に農耕に適する土を入れて、農地として耕作しうるようにした。従って、本件各土地は譲渡時において、耕作しようと思えば何時でも耕作しうる状態にあったものであり、現況は農地(休耕地)であった。現に、本件各土地の譲渡後、原告は、本件各土地の西側の隣接地に三〇〇本の梅の苗木を植栽している。草加市の固定資産税・都市計画税課税台帳(以下、台帳という。)には、本件各土地は、昭和五二年ないし五五年度以降雑種地と記載されているが、草加市の固定資産実地調査が綿密に行われていたら、梅の苗木の植栽状況が発見され、なお農地として右台帳に記載されていたと思われる。

(三) 仮に本件更正処分は適法であるとしても、本件加算処分は違法である。即ち、原告は、国税庁広報課監修にかかる「やさしい譲渡所得」と題する「財協の税務教材シリーズ」昭和五五年度版等に示された国税庁の指針に副って確定申告をなしたものであり、その申告にかかる税額計算の方法に誤りがあったとしても、その誤りにつき国税通則法六五条二項にいう正当な理由があるというべきだからである。

よって、原告は、本件課税処分の取消を求める。

二  被告

認否

1  請求原因1及び2の事実は認める。

2  同3(一)の事実は否認し、その主張は争う。

同3(二)の事実のうち、草加市の台帳に本件各土地が雑種地と記載されている点を認め、その余は否認する。

同3(三)の事実は否認し、その主張は争う。

主張

1  本件更正処分の根拠

原告の昭和五五年分の所得税額の内容は、次のとおりである。

順号 項目 金額(円) 摘要

(一) 課税総所得金額 四、三二六、〇〇〇

(二) 分離課税長期譲渡所得金額 五六、三二八、〇〇〇

(三) (一)に対する税額 七〇八、二四〇

(四) (二)に対する税額 一二、六一四、七〇〇

(五) 算出所得税額 一三、三二二、九〇〇 (三)と(四)の合計

右各項目の内容は、次のとおりである。

(一) 課税総所金額 四三二万六〇〇〇円

右金額は、不動産所得六二一万二九七六円と給与所得二二万円とを合計した総所得金額六四三万二九七六円から所得控除額合計二一〇万六七三〇円を控除した金額(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満切捨て)であるが、原告が確定申告をした金額と同額で、審査請求に至るまで原告の争わないところである。

(二) 分離課税長期譲渡所得金額 五六三二万八〇〇〇円

右金額は、原告が原告所有の本件各土地を八幡建装に昭和五五年一月一〇日、農地法五条一項三号の届出の受理を条件に(同年二月二〇日埼玉県知事から当該届出の受理通知を受けた。)譲渡したことについての収入金額六二二四万円から取得費三一一万二〇〇〇円、譲渡費用一八〇万円及び長期譲渡所得の特別控除額一〇〇万円の合計五九一万二〇〇〇円を控除した金額であるが、原告が確定申告した金額と同額で、審査請求に至るまで原告の争わないところである。

(三) 課税総所得金額に対する税額 七〇万八二四〇円

右金額は、原告が確定申告をした金額と同額で、審査請求に至るまで原告の争わないところである。

(四) 分離課税長期譲渡所得金額に対する税額

右金額の算定根拠は、本件各土地の譲渡が措置法三一条一項二号に該当することとなるため、次表のとおり算定したものである。

順号 項目 金額(円)

(1) 課税総所得金額 四、三二六、〇〇〇

(2) 分離課税長期譲渡所得金額の二分の一に相当する金額 二八、一六四、〇〇〇

(3) 合計所得金額 三二、四九〇、〇〇〇

(4) (3)に対する税額 一四、二五四、〇〇〇

(5) 二〇〇〇万円と課税総所得金額の合計 二四、三二六、〇〇〇

(6) (5)に対する税額 九、六三九、三〇〇

(7) 分離課税長期譲渡所得に対する税額 一二、六一四、七〇〇

右の項目の内容は、次のとおりである。

(1) 課税総所得金額(前記(一)) 四三二万六〇〇〇円

(2) 分離課税長期譲渡所得金額の二分の一に相当する金額 二八一六万四〇〇〇円

右金額は、租税特別措置法施行令(以下「措置令」という。)二〇条二項により、前記(二)の分離課税長期譲渡所得金額五六三二万八〇〇〇円の二分の一に相当する金額である。

(3) 合計所得金額((1)と(2)の合計) 三二四九万円

(4) 合計所得金額に対する税額 一四二五万四〇〇〇円

右金額は、措置令二〇条二項により、合計所得金額を課税総所得金額とみなして所得税法八九条を適用して計算した税額である。

(5) 二〇〇〇万円と課税総所得金額の合計 二四三二万六〇〇〇円

右金額は、措置令二〇条二項による。

(6) 二〇〇〇万円と課税総所得金額の合計に対する税額 九六三万九三〇〇円

右金額は、措置令二〇条二項により、二〇〇〇万円と課税総所得金額の合計額を課税総所得金額とみなして所得税法八九条を適用して計算した税額である。

(7) 分離課税長期譲渡所得に対する税額 一二六一万四七〇〇円

右金額は、措置法三一条一項二号ロの金額(措置令二〇条二項の金額、(4)引く(6))と同号イの金額八〇〇万円の合計額である。

2  本件加算処分の根拠

本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなる所得税額は三三四万九一〇〇円(原告が申告納付した九九七万三八〇〇円と右算出所得税額との差額)となるため、被告は国税通則法六五条一項に基づき当該所得税額(同法一一八条三項の規定により一〇〇〇円未満切捨て)に一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額一六万七四〇〇円(同法一一九条四項の規定により一〇〇円未満切捨て)を過少申告加算税として賦課決定した。

3  本件土地の譲渡は、措置法三一条の三に該当しない。

(一) 措置法三一条の三における「農地」の意義

ア 措置法一条は、用語の定義について規定しているが、その中に農地の定義はない。そして、同法三一条の三第一項、二項において、農地法が引用され、また同条二項において、措置法が引用され、同法は更に地方税法を引用している。以上のことから措置法が農地法が農地法等の法律と整合性をもって制定されていることは明らかである。したがって、措置法に規定する農地についての解釈(認定)は右の各法律に委ねられているということができる。

イ 農地法においては、農地とは「耕作の目的に供される土地」をいうものとされており(同法二条一項)、同条にいう農地であるかどうかは、当該土地の客観的状態、すなわち現況によって決り、所有者がその土地を農地として使用する目的であったかどうかという主観的意図は原則として関係がないとするのが一般であり、最高裁昭和四二年一〇月二七日第二小法廷判決・民集二一巻八号二一七ページ等多数の判例の明言するところである。また、地方税法においても、同法三八八条一項に基づく固定資産評価基準(昭和三八年自治省告示第一五八号)において、地目の認定は現況によるものとされている。

ウ したがって、措置法に規定されている農地についても、その認定基準は譲渡の時点の当該土地の現況によるべきことは明らかである。そして、右の考えから、措置法三一条の三第三項、同法施行規則一三条の四において、同法同条一項の適用を受けるためには、市長の特定市街化区域農地である旨を証する書類を添付することを要する旨規定しているものであるが、右の趣旨は、課税庁に当該土地の現況等を確認なさしめようということに存するのである。

(二) 本件土地の譲渡時の現況

草加市の台帳によれば、本件各土地のうち、別紙物件目録(一)の土地(以下「本件土地(一)」という。(二)、(三)も同じ。昭和五四年一一月二九日分筆前は七一一番一の一部)は昭和五四年度から、本件土地(二)(同日の分筆前は七一二番一の一部)は昭和五三年度から、本件土地(三)(同日の分筆前は七一三番一の一部)は昭和五五年度から、それぞれ現況雑種地となり、雑種地として課税されている。

また、台帳の現況地目の認定は、草加市による実地調査に基づいてなされたものであるが、本件訴訟が提起されるまで原告から何らの異議申立てもなされていない。

以上の事実から本件各土地は譲渡時において、現況が雑種地であったことが明らかである。

4  原告は、被告が従来の取扱いを変更して、現況が農地であるか否かを問題として措置法三一条の三第一項の適用を否認したのは違法である旨主張するが、課税庁において、同条の取扱いを変更した事実はなく、従来から現況が農地でない土地の譲渡については、同条の適用はしていない。

第三証拠

本件の証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因1、2の事実は、当事者間に争いがない。

二  本件更正処分の適法性

1  課税総所得に対する課税

原告の昭和五五年分の課税総所得金額が被告主張のとおり四三二万六〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満切捨て)であり、これに対する所得税額が七〇万八二四〇円であることについて、原告がその旨の確定申告をし、その後もこれを争っていないことは、原告の明らかに争わないところであるから、本件においてこれを前提とするを妨げない。

2  長期譲渡所得に対する課税

(一)  原告が、昭和五五年一月一〇日八幡建装に対し本件各土地を農地法五条一項三号に基づく農地転用届出書の受理を条件として代金六二二四万円で売却したこと(同年二月二〇日農地転用届出書受理)、原告が、昭和五六年三月一五日別表「確定申告」欄記載のとおり確定申告したことについては前記のとおり当事者間に争いがなく、また、成立に争いのない甲第二ないし第四号証によれば、原告は、本件各土地の二分の一の持分を昭和三三年一月九日に、次いで、本件各土地の残り二分の一の持分を同日に相続により取得していた森三郎から同四四年二月二〇日に、それぞれ相続により取得したことが認められるから、本件各土地の譲渡による譲渡所得については措置法三一条一項の適用がある。

(二)  原告が、本件各土地を譲渡したことにより取得した課税長期譲渡所得は右譲渡代金六二二四万円から取得費三一一万二〇〇〇円、譲渡費用一八〇万円及び長期譲渡所得の特別控除額一〇〇万円合計五九一万二〇〇〇円を控除した金額である五六三二万八〇〇〇円であることについて、原告がその旨の確定申告をし、その後も争っていないことは、原告の明らかに争わないところであるから、本件においてこれを前提とするを妨げない。

従って、本件各土地の譲渡による課税長期譲渡所得は四〇〇〇万円を超える場合であるから、措置法三一条一項二号に該当し、同号に従って算定した所得税額は一二六一万四七〇〇円である。

(三)  ところで、原告は、本件各土地は、措置法三一条の三第一項にいう「特定市街化区域農地等」に該当するから、本件各土地の譲渡による譲渡所得に対する課税については、同条同項が適用されるべきである旨主張するが、原告の右主張は以下に述べるとおり理由がない。

(1) 原告は、措置法三一条の三第一項の特定市街化区域農地等につき、農地であるか否かは不動産登記簿上の地目によるべきであって、その現況を問わない旨、ことにいわゆる宅地並み課税のなされている農地(登記簿上のそれをいうと解される。)を含む旨主張するけれども、右見解は独自の見解であって、採用の限りでない(登記簿上農地であって、現況農地でない土地が非農地として固定資産税の賦課を受けている場合、これをいわゆる宅地並み課税というべきか否かは格別、これに法条の文言を無視して同条項の特典を与えなければならないいわれはない)。

原告は、被告が従来、現況農地と認められない土地についても措置法三一条の三第一項を適用しており、突如として、従来の取扱を法の改正によらずして納税者に不利益に変更してなした本件各課税処分は租税法律主義に反する旨主張するが、被告が従来、原告の右主張のような取扱いをしていたことを認めるに足る証拠はなく(甲第九号証がその根拠となりえないことは、後記三に説示するところから明らかである。)、その余について判断するまでもなく原告の右主張は理由がない。

(2) 更に原告は、本件各土地の譲渡時の現況も農地であり、これを雑種地とする被告の認定は誤りである旨主張する。

およそある土地の現況が、措置法三一条の三第一項の特定市街化区域農地等の「農地」であるとは、それが現に耕作されている田若しくは畑であるか、又は、現に耕作されていない状態にあっても耕作するつもりになれば、いつでも簡単に耕地として復旧しうる田若しくは畑であることを要すると解すべきところ(特定市街化区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法二条、地方税法附則一九条の二第一項、一七条一号、農地法二条一項参照)、これを本件各土地の譲渡時の状況についてみると、証人岡田正の証言により真正に作成されたものと認められる乙第七、第八号証、証人森光造の証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和四八年以前から草加市旭町五丁目に本件各土地を含む約九〇〇坪の土地(以下、一団の土地という。)を所有し、自ら又は付近に居住する原田某等を雇って耕作していたが、右土地は、水はけが悪く、雨が降ると直ちに冠水する状態であったこと、昭和五〇年ころから右土地の周辺に徐々に住宅が建ち始め、付近の住民の中には、右土地内にガラス片等を投棄する者も現われたため、原告は、右土地の耕作を止めてしまったこと、その後、一団の土地は、草加市が実施した水路改良工事より排出された泥土によって埋め立てられ、さらに電電公社が実施した電話線ケーブル埋設工事により排出された残土によって埋め立てられたが、右残土の中には砂利、アスファルト・コンクリートの破片等の異物が混入していたため、右土地は農耕には適さなくなったことが認められ、また、前掲乙第七号証、原本の存在・成立ともに争いのない乙第一ないし第五号証、証人岡田正、同大山栄治の各証言によると、草加市においては、昭和四八年から市街化区域内に存する土地であって、不動産登記簿上の地目が田又は畑となっている土地については、毎年一月にその現況について調査をし、台帳に現況の記載をなしているところ、同五三年度の台帳の「現況」欄においては、一団の土地のうち草加市旭町五丁目七一一番一(以下、七一一番一の土地という。他の土地についても地番のみで記載する。前掲甲第二号証によれば、本件土地(一)が昭和五四年一一月二九日の分筆まで右土地の一部であったことが認められる。)については、「田」、七一二番一(前掲甲第三号証によれば、本件土地(二)が昭和五四年一一月二九日の分筆まで右土地の一部であったことが認められる。)の土地については「雑種地」、七一三番一(前掲甲第四号証によれば、本件土地(三)が昭和五四年一一月二九日の分筆まで右土地の一部であったことが認められる。)の土地については、「公道」との記載があり、同五四年度の台帳の「現況」欄には、七一一番一及び七一二番一の各土地については「雑種地」、七一三番一の土地については「公道」との記載があり、同五五年度の台帳の「現況」欄においては、本件各土地について「雑種地」との記載がされていることが認められる。他に以上の認定を左右するに足りる証拠はない。

なお、草加市長の昭和五六年二月二六日付証明書(甲第五号証)には、本件各土地がB農地であるとの記載があるが、前掲乙第四号証、証人岡田正の証言に照らせば、右記載は昭和四八年一月一日現在本件各土地がB農地であることの証明にすぎないことが認められる。

以上の事実を総合すると、本件各土地の譲渡時における現況は、前述の意味における農地とは認め難く、却って、農地ではなかったことを認めることができ、従って、本件各土地の譲渡による譲渡所得に対する課税について措置法三一条の三第一項の適用はないというべきである。

3  そうとすると、原告の昭和五五年分の所得税の額は、1及び2の合計である一三三二万二九〇〇円となり、これと同一の結論をとる本件更正処分は、適法である。

三  本件加算処分の適法性

本件更正処分により原告が新たに納付すべき所得税額は、前記二3記載の金額から原告が申告納付した九九七万三八〇〇円を差し引いた額である三三四万九一〇〇円となるところ、国税通則法六五条一項に基づき、右金額(同法一一八条三項により一〇〇〇円未満切捨て)の一〇〇分の五に相当する金額の過少申告加算税が課されるべきであって、本件加算処分は適法である。

なお、原告は、国税庁の指針に副って確定申告をしたのであるからその税額計算の方法が誤っていたとしても、その誤りにつき国税通則法六五条二項にいう正当の理由がある旨主張するけれども、原告が、それに副って確定申告をなしたと主張する「財協の税務教材シリーズ4昭和五五年度版やさしい譲渡所得国税庁広報課監修」(成立に争いのない甲第九号証)には、「特定市街化区域の農地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の税額の計算」について固定資産税について宅地なみの課税を受けるいわゆる特定市街化区域内のA農地及びB農地を昭和五六年一二月三一日までに宅地用等として譲渡した場合は、通常の場合より税率が軽減される制度として措置法三一条の三第一項に規定される内容が紹介されているが、そこに示された「農地」が不動産登記簿上の地目によるものであって、その現況を問わないとの指摘は存しない。

他に原告の確定申告における税額の計算が、国税庁の指針に副ってなされたものと認めるに足りる証拠はないので、原告の右主張は理由がない。

四  結論

以上のとおり、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高山晨 裁判官 小池信行 裁判官 深見玲子)

物件目録 (譲渡時の不動産登記簿上の表示)

(一) 所在 草加市旭町五丁目

地番 七一一番九

地目 田

地積 五六平方メートル

(二) 所在 右同

地番 七一二番四

地目 田

地積 三四一平方メートル

(三) 所在 右同

地番 七一三番四

地目 畑

地積 二二平方メートル

別表

課税処分の経緯

(昭和55年分)

<省略>

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